五つの赤い風船のサウンド的実験主義が頂点に達したアルバム。とくに人間の生と死をまっこうからテーマにした「時々それは」は、効果音を駆使した23分に及ぶアシッド・フォークの大作。

 ・ amazon : 五つの赤い風船 05. New Sky (1971)

西岡たかしの異才ぶりを象徴する傑作。「五つの赤い風船第五集part1」とあるのは、本来、次作の『Flight』とセットの2枚組みとして制作されたがURCの意向で1枚ずつ別々の作品として発表されたから。結果、本作は西岡たかしのソロ・アルバムと言ってもいい作品に仕上がっている。聞きどころはなんと言ってもA面の全体を占める23分にわたる幽玄のナンバー「時々それは」だ。90年代以降の音響派に直結するサイケデリックでタイム感を無にするような浮遊するメロディーとSEの波。涅槃の淵を漂うようなこの曲は風船が長い旅の末に辿り着いた最後の地だったのだろう。(田口史人)

ディスク:1
1. 時々それは
2. 私は地の果てまで
3. ボクは愛など知らないし
4. たまには一度は
5. 私は広い海に出る

『New Sky』と対で発表されたアルバム。こちらはよりポップで、風船のコーラス・ハーモニーを存分に楽しめる。とくにアカペラではじまる「小石をけって見よう」は名品。

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前作『NEW SKY』とセットで発表されるはずだった風船の第5作の後編。西岡たかしはこの2枚をもって風船を解散させるつもりだったとコメントしているように、最終作らしい終末感と、これまで培って来たものをこの1作に注ぎ込もうという制作者(西岡)の熱気が伝わってくる。しかし、その音の感触は内なる熱とは反対に、これまでの風船のアルバムの中では最も穏やかな表情を見せている。東の鍵盤のドローン的な効果や叙情的な長野ベース、藤原秀子のヴォーカルも活きており、バンドとしての充実度も終末に向かうに従ってその濃度を増している。(田口史人)

ディスク:2
1. ボクは風
2. そんな気が…
3. つまらない…
4. 小石をけってみよう
5. ふる里の言葉は
6. 風がなにかを…
7. 同じ穴のなんとかさ!
8. めめずはん
9. キリンさん
10. 淋しいサイの目
11. さァ、これでやっと